1. 栄養の基本

三大栄養素とは

体を動かすエネルギー源となる栄養素は3つあり、これを三大栄養素(マクロ栄養素)と呼びます。

タンパク質(Protein)

1g = 4kcal

役割:

  • 筋肉、臓器、皮膚、髪の材料
  • 酵素やホルモンの材料
  • 免疫機能の維持
  • 満腹感の持続

推奨摂取量:
体重 × 1.5〜2.0g/日
(運動する人は2.0g以上)

主な食材:
鶏胸肉、魚、卵、大豆製品、牛肉、プロテイン

炭水化物(Carbohydrate)

1g = 4kcal

役割:

  • 脳と体の主要エネルギー源
  • 運動パフォーマンスの維持
  • 筋グリコーゲンの補充
  • 集中力の維持

推奨摂取量:
総カロリーの40〜50%
(活動量により調整)

主な食材:
米、パン、麺類、芋類、果物、野菜

脂質(Fat)

1g = 9kcal

役割:

  • 効率的なエネルギー源
  • ホルモンの材料
  • 細胞膜の構成成分
  • ビタミンの吸収を助ける

推奨摂取量:
総カロリーの20〜30%
(1g=9kcalなので注意)

主な食材:
魚油、オリーブオイル、ナッツ、アボカド

PFCバランスの考え方

PFCバランスとは、Protein(タンパク質)、Fat(脂質)、Carbohydrate(炭水化物)の摂取バランスのことです。

ダイエット時の理想的なPFCバランス:

  • P(タンパク質): 30〜40%
  • F(脂質): 20〜30%
  • C(炭水化物): 30〜50%

実践例:1日1,800kcal摂取の場合

P: 35%(630kcal) → 630kcal ÷ 4kcal/g = 158g

F: 25%(450kcal) → 450kcal ÷ 9kcal/g = 50g

C: 40%(720kcal) → 720kcal ÷ 4kcal/g = 180g

ビタミン・ミネラルの重要性

三大栄養素だけでなく、ビタミン・ミネラル(微量栄養素)も非常に重要です。

  • ビタミンB群: エネルギー代謝に不可欠
  • ビタミンD: カルシウム吸収、免疫機能
  • ビタミンC: 抗酸化作用、コラーゲン生成
  • カルシウム: 骨の健康、筋収縮
  • 鉄: 酸素運搬、疲労防止
  • マグネシウム: 筋肉の弛緩、エネルギー生成

⚠️ 注意:極端なカロリー制限をすると、これらの微量栄養素が不足しがちです。バランスの良い食事が重要です。

水分摂取の重要性

水は栄養素ではありませんが、体の約60%を占める最も重要な成分です。

1日の推奨水分摂取量:2〜3リットル

  • 運動する日:3リットル以上
  • 運動しない日:2リットル以上

水分摂取の効果:

  • 代謝の促進
  • 老廃物の排出
  • 満腹感の促進(食べ過ぎ防止)
  • 便秘の予防
  • 肌の健康維持

💡 プロのアドバイス:

のどが渇いたと感じる時は、すでに軽い脱水状態です。喉が渇く前に、こまめに水分補給をしましょう。

2. カロリー管理

カロリー計算の基本

ダイエットを成功させるには、摂取カロリーと消費カロリーのバランスを管理することが必要です。

STEP 1: TDEEを算出する

まず、自分の1日の総消費カロリー(TDEE)を計算します。
ツールページで簡単に計算できます。

STEP 2: 目標摂取カロリーを設定

TDEEから300〜500kcalを引いた値を目標摂取カロリーとします。

例:TDEE 2,000kcal → 目標 1,500〜1,700kcal/日

⚠️ 重要:目標摂取カロリーは基礎代謝を下回らないようにしましょう。基礎代謝以下の極端な制限は危険です。

食事記録の付け方

カロリー管理の第一歩は、自分が何を食べているかを把握することです。

記録する項目:

  1. 食事の時間
  2. 食べたもの(料理名、食材)
  3. 量(g、個数、ml等)
  4. 推定カロリー
  5. P・F・Cの各グラム数(可能なら)

💡 最初の3日間は記録だけ:

いきなり食事を変えるのではなく、最初の3日間は普段の食事を記録するだけにしましょう。現状把握が改善の第一歩です。

おすすめアプリの活用

手書きの記録も良いですが、アプリを使うと簡単にカロリーやPFCを計算できます。

  • MyFitnessPal: 世界最大級の食品データベース
  • あすけん: 日本の食品に強い、栄養士のアドバイス付き
  • カロミル: 写真で記録、AIが自動判定
  • FatSecret: シンプルで使いやすい

外食時の対応策

外食は カロリーが高くなりがちですが、工夫次第でコントロールできます。

外食のコツ:

  • メニュー選び:
    • ✅ 焼き魚定食、刺身定食
    • ✅ サラダチキン、グリルチキン
    • ✅ しゃぶしゃぶ、ステーキ(赤身)
    • ❌ 揚げ物、クリーム系パスタ
    • ❌ ラーメン+チャーハンなどの炭水化物重ね
  • 量の調整:
    • ご飯を小盛りにする(または半分残す)
    • 先にサラダや汁物でお腹を満たす
    • ゆっくり噛んで食べる
  • 飲み物:
    • ✅ 水、お茶、ブラックコーヒー
    • △ ゼロカロリー飲料(たまに)
    • ❌ ジュース、砂糖入りコーヒー

外食後のリカバリー:

外食でカロリーオーバーした日があっても、翌日や翌々日で調整すればOKです。1週間単位でバランスを取りましょう。

3. 実践的な食事法

1日の食事例

1日1,800kcal、P:F:C = 35:25:40 の例をご紹介します。

健康的な食事の例
朝食(500kcal)
  • オートミール 50g(190kcal)
  • バナナ 1本(90kcal)
  • ゆで卵 2個(160kcal)
  • プロテインシェイク(60kcal)

P: 35g / F: 12g / C: 55g

昼食(650kcal)
  • 玄米 150g(250kcal)
  • 鶏胸肉(皮なし)150g(180kcal)
  • ブロッコリー 100g(35kcal)
  • サラダ(レタス、トマト、きゅうり)+ ドレッシング少量(80kcal)
  • 味噌汁(105kcal)

P: 52g / F: 15g / C: 65g

間食(150kcal)
  • ギリシャヨーグルト 100g(100kcal)
  • アーモンド 10粒(50kcal)

P: 12g / F: 7g / C: 10g

夕食(500kcal)
  • サーモン 120g(240kcal)
  • さつまいも 100g(130kcal)
  • ほうれん草のお浸し(30kcal)
  • 豆腐の味噌汁(100kcal)

P: 35g / F: 16g / C: 40g

合計:1,800kcal

P: 134g (30%) / F: 50g (25%) / C: 170g (38%)

タンパク質確保のコツ

ダイエット中は、タンパク質をしっかり摂ることが最も重要です。

目標:体重 × 1.5〜2.0g/日

例:体重60kgの人 → 90〜120g/日

高タンパク質食材(100gあたり):

  • 鶏胸肉(皮なし): タンパク質 22g、115kcal
  • 鶏ささみ: タンパク質 23g、105kcal
  • マグロ赤身: タンパク質 26g、125kcal
  • サーモン: タンパク質 20g、200kcal
  • 卵(1個50g): タンパク質 6g、80kcal
  • 納豆(1パック50g): タンパク質 8g、100kcal
  • ギリシャヨーグルト: タンパク質 10g、100kcal
  • 豆腐(1丁300g): タンパク質 20g、180kcal

💡 各食事でタンパク質30g以上を目指す:

3食+間食で、バランスよくタンパク質を分散させると、筋肉の合成効率が最大化されます。

糖質との賢い付き合い方

糖質は敵ではありません。適切に摂取すれば、エネルギー源として非常に有用です。

  • ✅ 良質な糖質:
    • 玄米、雑穀米、全粒粉パン
    • さつまいも、かぼちゃ
    • オートミール
    • 果物(適量)
  • △ 控えめにしたい糖質:
    • 白米、白パン、白い麺類
    • 菓子パン、ケーキ
    • 清涼飲料水、ジュース
    • お菓子類

GI値(Glycemic Index)を意識しよう:

GI値が低い食品は血糖値の上昇が緩やかで、脂肪として蓄積されにくいです。

  • 低GI(55以下):玄米、そば、オートミール、さつまいも
  • 中GI(56〜69):白米、パスタ、バナナ
  • 高GI(70以上):食パン、餅、じゃがいも、砂糖

良質な脂質の選び方

脂質も必要不可欠な栄養素です。質を重視しましょう。

  • ✅ 積極的に摂りたい脂質:
    • オメガ3脂肪酸: 青魚(サバ、サンマ、イワシ)、亜麻仁油、えごま油
    • 一価不飽和脂肪酸: オリーブオイル、アボカド、ナッツ類
  • △ 適度に:
    • 飽和脂肪酸:肉の脂、バター、チーズ
  • ❌ 避けるべき脂質:
    • トランス脂肪酸:マーガリン、ショートニング、揚げ物

食物繊維の活用

食物繊維は「第6の栄養素」とも呼ばれ、ダイエットに非常に有効です。

食物繊維の効果:

  • 満腹感の持続
  • 血糖値の急上昇を抑制
  • 腸内環境の改善
  • 便秘の予防・改善
  • コレステロールの低下

目標:1日20〜25g以上

高食物繊維食材:

  • 野菜:ブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、レタス
  • きのこ類:しいたけ、えのき、しめじ
  • 海藻類:わかめ、昆布、もずく
  • 豆類:納豆、豆腐、枝豆
  • 全粒穀物:玄米、オートミール、全粒粉パン
  • 果物:りんご、みかん、キウイ

食事のタイミング

何を食べるかだけでなく、いつ食べるかも重要です。

  • 朝食: 起床後1〜2時間以内に。代謝を活性化
  • 昼食: 午後のエネルギー源として、しっかり食べてOK
  • 夕食: 就寝3時間前までに。炭水化物は控えめに
  • 間食: 午後3〜4時頃が理想的
  • 運動前: 1〜2時間前に軽食(バナナ、おにぎり等)
  • 運動後: 30分以内にタンパク質+炭水化物

⚠️ 避けるべき食習慣:

  • ❌ 朝食を抜く
  • ❌ 夜遅くのドカ食い
  • ❌ 1日1〜2食の極端な食事
  • ❌ ながら食べ(スマホ見ながら等)

4. よくある食事の失敗

❌ 失敗1:極端な糖質制限

危険性:

  • エネルギー不足による倦怠感
  • 集中力の低下
  • 筋肉量の減少(糖新生)
  • 便秘になりやすい
  • リバウンドしやすい

✅ 正しいアプローチ:
糖質を完全に抜くのではなく、質と量を調整します。良質な糖質を総カロリーの40〜50%程度摂取しましょう。

❌ 失敗2:カロリー制限しすぎ

危険性:

  • 基礎代謝の低下
  • 筋肉量の大幅な減少
  • 栄養失調
  • 免疫力の低下
  • ホルモンバランスの乱れ
  • 極度の空腹でドカ食いのリスク

✅ 正しいアプローチ:
摂取カロリーは基礎代謝の90〜100%以上を確保。TDEEから300〜500kcal減らす程度にしましょう。

❌ 失敗3:偏った食事

例:

  • リンゴだけ、バナナだけの単品ダイエット
  • サラダだけ、野菜ジュースだけ
  • プロテインだけ

危険性:

  • 必須栄養素の不足
  • 筋肉量の減少
  • 体調不良
  • 継続不可能

✅ 正しいアプローチ:
タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取。様々な食材から栄養を摂りましょう。

❌ 失敗4:脂質を完全にカット

危険性:

  • ホルモン生成の阻害
  • 肌や髪の質の低下
  • 脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の吸収不良
  • 満腹感が得られない

✅ 正しいアプローチ:
脂質は総カロリーの20〜30%確保。良質な脂質(魚油、ナッツ、オリーブオイル等)を選びましょう。

プロの結論
極端な制限は短期的には体重が落ちますが、長期的には失敗します。
バランスの良い食事を、適度なカロリー制限で継続することが、唯一の成功への道です。

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